中国新外商投資法時代にどう向き合うべきか

額尓敦畢力格(エレドンビリゲ)
中国弁護士
上海開澤法律事務所パートナー弁護士。日本一橋大学法学博士。人事労務、コーポレート・M&A、撤退・清算、訴訟・債権回収、知的財産・リスク管理、エンターテインメント、国際取引・海外進出、コンプライアンス等企業法務全般を主に取り扱う。現在は約30名のチームで、中国人弁護士ならではの強みを生かした的確かつ迅速な解決力をモットーに、中国全域で日系企業に特化した包括的な業務を提供する。

2019年3月15日に中国は「中華人民共和国外商投資法」(以下「外商投資法」という)を制定し、2020年1月1日に施行されることになった。また、外商投資法の施行に伴ってその施行細則である「中華人民共和国外商投資法実施条例」(以下「実施細則」という)が同日付で施行されることになった。外商投資法の施行に伴って、5年間の経過措置があるものの、40年間中国における外商投資の根拠法として機能してきた「中華人民共和国中外合資経営企業法」、「中華人民共和国中外合作経営企業法」、「中華人民共和国外資企業法」(以下「外資三法」という)が2020年1月1日から5年後に廃止されることになった。

一 外資三法時代に対する見直し

外資三法時代では、外国企業が中国に投資し会社設立する際に、国家発展改革委員会、商務委員会、さらに工商管理監督局の三つの行政機関にてそれぞれ許認可を取得しなければならず、手続は煩雑なし重複が余儀なくされていた。その後、中国政府は、外商投資に対する規制緩和を段階的に行ってきたが、国家発展改革委員会と商務委員会の二本立ての管理体制は変わらなかった。また、法制度上、外商投資の保護、知的財産の保護の不足等の問題点を見なすため、外商投資法を制定するに至った。

二 外商投資法の概要

(1) 適用対象

外商投資法第2条によれば、外国の個人、企業あるいはその他の組織が中国において直接的にあるいは間接的に行わる下記のようなすべての投資活動に適用される。

  • 外国投資家が単独あるいはその他の投資家と共同して中国において外商投資企業を設立
  • 外国投資家が中国における企業の株式、資産あるいはその他権益を取得すること
  • 外国投資家が単独あるいはその他投資家と共同して中国国内に新たなプロジェクトに投資すること
  • 法律、行政法規あるいは国務院が規定するその他の方式の投資

外商投資企業とは、中国において全部あるいは一部を外国投資家が投資し、法律に基づいて中国国内にて登記している企業のことを指す。

上述において太字で表記したところに関しては、その他組織とは外国の経済組織、国際組織、その他国家あるいは地域の政府及びその部門等を指します。また、その他投資家とは、中国における個人、法人等を指しますが、中国の個人が外国の投資家と共同して外商投資企業を設立できる点は旧外資三法時代に許されてなかった。しかし、海外に定住している中国国民は、留学と公務に従事している者を除き、外国投資家にとして扱われる。

さらに、新たなプロジェクトとは何かに関して、外商投資法も実施細則も定義づけを行っていない。ただ、商務部の最新の「外商投資情報における報告事項に関する公告」にいて、「外国(地区)企業が中国において生産経営活動を行っている場合、及び外国(地区)企業が中国において生産経営活動を行うための常駐駐在機関の場合」は、外商投資情報報告しなければならないとしていることを考えれば、外国企業等が中国において法人拠点を設立していないが、契約等方法で中国において新しいプロジェクト投資を行っている場合を指していると推測できる。

(2) ネガティブリスト方式

中国政府は外商投資に関して、特定領域のみにおいて外国企業の進出を規制するネガティブリスト方式を採用している。現在最新のバージョンは2019年版「外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)」である。ネガティブリストは全国一般に適用されるものと、自由貿易区のみに適用される自由貿易区のネガティブリストがある。基本的に以下のとおりである。

  • ネガティブリストにおいて投資禁止している分野において外商投資できない
  • ネガティブリストにおいて制限されている分野においては、その規定に従ってのみ投資できる
  • ネガティブリスト以外の分野においては内外一致の原則により、外商投資は内国企業と対等である。

他方、中国において外商投資に関するネガティブリストだけではなく、投資を積極的進めることを目的とする「外商投資奨励産業目録(2019年版)」がある。外商投資を奨励する分野においては積極的に優遇策を打ち出している。例えば、「外商投資奨励産業目録(2019年版)」において以下の優遇策を講じている。

  • 奨励している産業において外国企業が投資する際、その投資総額範囲において自家用設備に関して輸入税を免除する
  • 西部地域の外商投資を奨励している産業に投資する場合、企業所得税の15%を減免する
  • 集約用地における奨励類産業に投資する場合、優先的に土地確保し、その地価は同地域における同等の工業用地の払下げ金額の70%とする等。

(3) 管轄行政部門

外国企業が中国において投資し、会社を設立する場合の登記等手続を行う管轄部門を新しく発足した SMAR(国家市場監督管理総局)とした。法律法規よりほかの部門が審査する場合を除き、外国企業に対する許認可、ネガティブリストに該当するか否や、合併審査、安全審査等はすべて SMAR が管轄することになっており、商務委員会に対しては情報報告することのみになった。

(4) 法人形態及び組織

外商投資法の施行とともに、今後外商投資企業の形態及び組織に関して中国内資企業と同じく「中華人民共和国会社法」と「中華人民共和国組合企業法」が適用されることになり、有限公司と組合の二つの形態のみとなり、当該二つの法律に基づいて法人組織を変更することになる。外商投資企業法が既存の外国投資企業に関して5年間の法人形態及び組織を変更する経過措置を設けているので、少なくとも5年後に中国におけるすべての企業が上記二つの法人形態に統一されることになり、組織も外資三法時代の形態と大幅に異なる組織形態となる(既存外商投資企業の形態及び組織変更の際の注意点に関して後に述べる)。

(5) 投資契約に関する扱い

既存の外商投資企業、即ち外資三法時代に締結された投資契約書は、法人形態と組織の変更後も、その契約において約定されている株式譲渡、収益分配、剰余財産の分配方法等に関する条項は外商投資法の影響を受けず、5年間の経過措置を関係なく、有効に扱われる。

しかし、2019年12月16日に中国最高人民法院はいち早く投資契約に関して「中華人民共和国外商投資法の適用に関する若干問題に関する司法解釈」を公表した。外商投資法の施行日と同日に施行されている。当該司法解釈の適用対象は、外国の個人、法人あるいはその他の組織が直接あるいは間接的に中国において投資する際に締結した関連契約を指し、外国投資家が贈与、財産分与、企業合併、企業分立等の方法で取得した株式紛争等になる。主な内容は以下の通りである。

  • ネガティブリスト以外の分野における投資契約に関して、当事者が管轄行政機関の許認可を取得していないことを理由に契約無効あるいは成立していないことを主張した場合、人民法院はその主張を支持しない。
  • ネガティブリスト禁止分野における投資契約に関して、当事者が投資契約無効を主張した場合、人民法院はその主張を支持する。
  • ネガティブリスト制限分野における投資契約に関して、当事者が制限分野であることを理由に投資契約の無効を主張した場合、人民法院はその主張を支持する。ただし、確定判決前に、当事者は制限分野における投資条件を満たし、かつ投資契約の有効を主張した場合、人民法院をその有効性を支持する。
  • 確定判決前に、ネガティブリストの調整により外国投資家の投資が禁止あるいは投資制限分野でなくなった場合、人民法院は当事者の主張により、投資契約書の有効性を支持する。

(6) 外商投資保護

外商投資法及びその実施細則は、外国投資家の対中投資に対する保護に関していくつかの明確な規定を設けている。

  • 国による徴収・収用

    外商投資法第20条は、国は外国投資家の投資対して徴収を行わない、ただし公共の利益により徴収・収用する場合、法的の手続に従って、合理的な補償を行うとしている。

  • 外貨送金の自由

    外商投資法第21条は、外国投資家が中国において出資、利益、収益、資産処分による所得、知的財産権使用許諾費、法によって取得した補償あるいは賠償金、会社清算による所得等は法に従って人民元あるいは外貨にて払込みまた送金できるとしている。しかし、本条文の実用性に関しては今後の運用の行方に注目する必要があると思われる。

  • 知的財産・商業秘密の保護

    外商投資法第22条は、国は外国投資家及び外商投資企業の知的財産権を保護し、知的財産権の権利所有者及びその権利を保護する。知的財産侵害行為に対して法によりその法的責任を厳格に追及するとしている。また、知的財産権に関する強制移転を禁止しており、旧外資三法時代より手厚く保護する意思が伺える。 また、第23条において、外国投資家、外商投資企業の商業秘密に関して、それを知りえた行政機関及びその職員による秘密漏えいを禁止している。

  • 政府部門による政策等の規範化

    政府部門による政策等の規範化に関してまず、外商投資法第24条は、地方政府による政策、法規範等が上位の法律に違反してならないとしており、地方政府による恣意的な立法を制限している。これにより、国は外国投資関連法規範の安定性、統一性を図り、乱立する法律・規則に外国企業が戸惑わされている状況を打開しようとしている。

また、外商投資法第25条は、地方政府及び関連部門が外商投資家、外商企業に対して行う政策的承諾及び契約等に関して、履行しなければならないとしており、国家・公共の利益により変更をされる場合、その損失を補償しなければならないとしている。

三 外商投資法時代をどう対応する

外商投資法とその実施細則の施行により、5年間の経過措置後旧外資三法は廃止され、内外問わず、すべての企業は中国会社法に基づいて規制されることになる。そのため、過去に外資三法によって設立され、存続してきた法人は、経過措置期間において中国会社法に従って法人形態、組織形態等を変更しなおす必要がある。とりわけ、定款に関する変更が重要である。

具体的な対応策として

  • まずは定款における形式的に表記及び法人組織を中国会社法に従って修正すること。
  • 外商投資法の施行に伴って株主総会が法人の最高権力機関になるため、過去に董事会(役員会)で会社の経営方針、予算案承認、配当案承認等重要事項を過半数で決議されていた場合、外商投資法及び中国会社法において定款に特別な規定ある場合を除き、株主総会において決議されることになる。
  • 中国会社法第42条は、「株主はその出資比率によって決議権を行使する。ただし、定款で別途規定がある場合を除く」としており、法人形態及び組織変更する際に定款も合わせて自分に有利な方向に修正することは重要である。
  • 旧外資三法時代に外商投資企業として認定されるには外商投資が最低25%を占めなければならなかったので、25%のみ出資している企業も多く存在する。そのため、旧外商三法時代に不明確であった株主権利保護のための救済手段は外商投資法及び中国会社法においてすべて行使できるようになる。
  • 旧外資三法時代において投資契約に関する紛争によって日中合弁解消をできていたが、外商投資法及び中国会社法においては、投資契約の約定によって法人解散清算できるかは不明確になった。ただし、中国会社法第182条において「膠着状態による解散制度」をもうけており、また法人形態及び組織変更過程において会社解散清算に関する定款規定を見直した方がいいかもしれない。

最後に、中国の外商投資法及びその実施細則の施行に伴って、旧外資三法時代に比べれば、「法人最高権力機関は董事会(役員会)から株主総会へ」、「投資契約の重要性は定款に取って代われる」という大きいな変化を迎えている。中国における外商投資に関して手厚い保護と法的安定性をもたらすと同時に、既存の外商投資企業はその対応に追われるだろう。

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