「つながり」から「ぬくもり」へ 5G時代におけるスマホ戦略の最前線

携帯電話が「スマート時代」に入ったことにより、消費者のマホ購買習慣も変化を遂げてきた。スマートフォン機種の世代交代はますます加速し、今や中国の消費者の平均買い替えサイクルは 22 か月(2 年未満)と、隣国の日本の 26 か月より高いペースになっている。

アップル、ファーウェイ(華為)、サムソン、OPPO などのスマホメーカーは、こうした環境を背景に成長の機会を十分に享受してきた。しかし、機種の世代交代のスピードが速まるにつれ、個人情報のセキュリティやプライバシー保護、青少年のスマホ依存など、持続可能性にかかわる多くの問題が顕在化しつつある。


2019 年下半期に入り、スマホ業界の競争はますます激化している。米中貿易摩擦や 5G 営業許可証の交付、AI テクノロジーの成熟化など、政治や科学技術をめぐる外部のマクロ環境の影響を受け、スマホ業界では大手メーカーによる市場秩序の再編が始まり、「ハイエンド化」、「マーケットの裾野拡大」、「海外参入」などの動きが出ている。

かつてマーシャル・マクルーハンが「メディアとは身体の拡張である」と述べたとおり、「テクノロジーとツール」を論じるに当たって、「社会と人」は避けて通ることのできない要素である。事業成長や顧客戦略を目指す 5G 時代のスマホメーカーは、最新の取り組みとして、スマホが持つ社会性を注視している。

1. 狂騒するスマホ市場で今、何が起きているか?

中国のスマホ市場は、すでにストック型のビジネスモデルに移行した。新たな商機を探る方策として、3 つの方向性が派生している。

  • 「ハイエンド化」:よりハイエンドな市場や消費者をターゲットとして製品やサービスを提供する。
  • 「裾野開拓」:三、四線都市と呼ばれる地方都市や農村部の市場を開拓する。
  • 「海外参入」:中国を離れて海外市場に打って出る。

ハイエンド化、高額化はスマホメーカーが現段階で進める重要な戦略布陣の一つである。本稿では、ハイエンド化の動向について詳細に取り上げ、踏み込んだ分析を行う。(その他の関連動向については、MSC の今後のレポートで分析予定)

スマホ市場のハイエンド化は、より高い価格、より優れた製品技術、およびターゲット層の設定やマーケティングにおける高級路線化に体現される。

1.1 スマホの高額化

スマホの新品価格は上昇し続けており、ハイエンド市場に狙いを定めるスマホメーカーが増えつつある。*スマホ業界では、主に価格帯に基づいてローエンド・ミドルエンド・ハイエンドの区分を行う。概ね、エントリーモデルの目安が 1200 元(200 米ドル)以下、ミドルエンドモデルが 1800-2400 元(300-500 米ドル)、ハイエンドモデル(フラッグシップ機含む)が 400 米ドルとされる。

印象的な事例として挙げられるのは、2018 年にアップル社が発表した新機種の iPhone X Max である。これまでの iPhone の最高スペックモデルと比較して、iPhone Max の価格は 42.9%高額である。アップル社による価格帯の引き上げは他社製品にも値上げの余地をもたらし、他社も次々とスマホの高額化に追随した。

1.2 スマホの高スペック化

スマホ技術の進歩に伴い、スマホに関する中核技術も次々と更新され、更新のペースもますます加速している。指紋認証技術は発表から普及まで 3 年近くを要したが、「ベゼルレス」は発表から普及までわずか 2 年だった。今後はマルチカメラ化がスマホの主なトレンドになるとみられる。

ファーウェイのトリプルカメラモデル「P20」の成功により、トリプルカメラまたはクアッドカメラを搭載することがフラッグシップモデルのトレンドとなった。AR、VR 機能の普及に伴い、マルチカメラ技術の用途は今後さらに拡大していくとみられる。

1.3 消費者の認知度と支出意欲の高まり

社会の発展に伴い、一般市民の消費志向にも変化が生じ、美意識のトレンドも変わりつつある。「性愛の淡泊化」、「ミニマリズム」などの価値観や、より高い文化的、芸術的価値を盛り込んだ製品が消費者に訴求するようになった。

その一方で、『中国消費新トレンド』のデータが示す通り、一般市民の環境保護意識も高まりつつあり、とりわけハイエンド層の消費者は、「環境にやさしい」消費の在り方を重視し、CSR コンセプトを打ち出すブランドをより好んで消費する傾向にある。

このほか、経済発展に伴い消費者やスマホ業界の細分化も進み、より幅広いスマホの選択肢が消費者に提供されるようになった。消費者の消費志向も次第にハイエンド化し、その意向は「スマホを買いたい」から「より良いスマホを買いたい」に変わって来た。

1.4 斬新さを増すマーケティング手法

近年、スマホメーカーの間では、スーパーカーや奢侈品などの高級ブランドとタッグを組んで「ハイエンド提携」を打ち出す動きが相次いでいる。

ファーウェイはライカと提携。ポルシェと提携した OPPO は、ルーブル美術館で新商品「OPPO Find X ランボルギーニ限定版」の発表会を開催した。OnePlus はマクラーレンとの提携による「6T」を発表。同様の限定カスタマイズ版スマートフォンが次々と登場している。

このような提携は、商品発表時に消費者の注意を引き、購買意欲を掻き立てる上で確かに効果的である。ただし、こうした手法が常態化すれば、同様のブランド提携商品に対する消費者の関心が薄れかねない。高級ブランドとの提携というアイデアの効力はすでに失われつつあるとの論評もある。

2. 価格設定、製品技術、マーケティング手法が「ハイエンド化トレンド」下の突破口に

スマホメーカーにとって、適正な価格設定は、製品の価値を消費者に発信する方法の一つである。

現在、一部スマホメーカーは製品の価格帯をミドルエンド、ローエンドに集中させているが、ハイエンド消費者に訴求するためにはメーカー側もハイエンド側へシフトしていくことが求められる。ハイエンド化には、戦略的に価格設定を引き上げると同時に、ブランド価値やサービスの質を高めるという意味合いがあり、より優れた製品、より質の高いサービス、より価値の高い企業イメージを体現している。

OPPO を例に取ると、現在の製品ラインナップ上の各製品は、それぞれ異なる消費者層をターゲットにしている。現在のところ、OPPO のうち人気が高い製品は「R シリーズ」に代表されるミドルエンド製品で、「OPPO R9」は 2016 年のシェアが同年最高の 6%に達した。一方、最高級モデルの「findx」の売上は、アップル社製品に対して明確な優位を示せていない。

価格だけでなく、技術革新や製品の差別化も、スマホの競争力の核をなしている。製品ラインナップを絶えず充実させ、ハイエンドかつ特色のある製品を次々と投入することが、スマホメーカーのブランド力強化につながる。

Apple watch はアップル社が iPhone、iPad などに続いて投入した製品であり、従来の製品と同じく消費者の心に高級感とアップルらしさを印象付けた。

この製品は、既存のアップル社端末との連携によりメッセージ受信やデータ同期が行えるばかりでなく、スマホ機能の延長として、健康管理との連携という独創的なアイデアが盛り込まれた。利用者の健康状態をモニタリングしたり、運動状況を記録したりすることのできるこのスマートウォッチの登場によって「電子製品は人間の健康に有害」という固定観念が打破された。

「よりアクティブに、より健康に、より人との絆を保ちやすく」を掲げた製品のデザインコンセプトには、イノベーションや、製品差別化に関するアップル社の考えがより鮮明に反映されており、ブランド全体のイメージ向上に寄与している。

ブランド力の向上を目指すスマホメーカーは、既存のブランドイメージを基盤としつつ、ハイエンド消費者の「高級志向」に合わせてマーケティング戦略をある程度調整していく必要がある。競争力を追求するスマホメーカーが最も注意すべきことは、消費者がその製品にお金を払いたくなるかどうかである。ブランドマーケティングにおいては、外部機関による調査の形でターゲット層にアクセスする手法も考えられる。

テクノロジーに関する話題を発信するブログ――「科技之美」、「何同学」などの登場も、従来型のブランドマーケティング手法に衝撃をもたらしている。

こうしたブログ上では、動画、動画上のコメント字幕(弾幕)、コメント、レスポンスなどの機能を使って、ブロガーと消費者が実際的でリアルタイムなやり取りを展開しており、異なるメーカーの類似価格帯のスマホが大胆に比較されている。これはスマホメーカーにとっては衝撃であり、より高度な製品技術やマーケティング方式による対応を要する。

「ハイエンド化・高額化」のトレンドの下、消費者の認識も次第に高まりつつあり、ブランドへの期待はもはや単なる機能に留まらなくなった。ブランドの背後にある企業価値や文化的属性も、スマホメーカーが今後より多くの消費者に影響を与え、支持を勝ち取っていくためのカギになりつつある。

3. 使用済み端末の回収は単なるコストにあらず メーカーのブランド価値と将来性を強化

本稿の冒頭で述べた通り、使用済み端末の回収は、環境保護、プライバシー保護および情報セキュリティ、スマホ弱者である青少年や高齢者に対する配慮などと同様に、すでにスマホ業界において重要な社会問題となっている。こうした問題を適切に解決できるかどうかは、メーカーの持続可能な発展の可否にも直結する。

ここでは「使用済み端末の回収」を例に、スマホメーカーが自社に適した持続可能な発展の道を探る方策を分析する。

3.1 憂慮すべき中国の電子機器回収の現状 企業や市民に欠ける意識と制度の不備

中国では 4 億台の携帯電話が使用され、使用済み端末の回収市場も約 2,000 億元規模に上るが、中国における携帯電話の回収率はわずか 5%に留まる。中国ではこれまで使用済み端末回収の仕組みが整っておらず、このため大量の電子ごみを適切に処理できない状況である。また、電子ごみは素材構成が複雑で、人体や環境に有害な毒性のある化学物質も含まれる。

このほか、業界としての統一規範がなく、回収意識が遅れていることや、プライバシー情報の漏洩などの問題も、使用済み端末回収をめぐる難題となっている。使用済み端末回収の仕組みが整うメーカーはごくわずかで、すでに仕組みのあるメーカーも実際の回収効率を把握できていない状況で、使用済み端末回収に関する消費者意識の醸成やその価値の発信においても、企業の取り組みは十分には程遠い。

3.2 持続可能な「使用済み端末回収」の仕組みづくり、スマホメーカーの競争に有利に

数多くのスマホブランドの中でも、アップル社の「Apple Trade In 下取りプログラム」は、スマホの買い替え促進措置の中でも、かなり完成度の高い仕組みである。

新製品への買い替えを希望するユーザーは、条件に適合する使用済み端末の下取りを申請すれば、下取り価格を商品代金から差し引いて購入することができる。アップル社の公表したデータによれば、2015 年度、同社が回収した電子ごみは 4 万トンを超え、ここからリサイクルされた材料は 2.8 万トンに上り、これには金 1 トン、銀 3 トンも含まれる。

3.2.1 より持続可能で高度なサプライチェーン管理を要する使用済み端末の回収

アップル社による使用済み端末回収事業の強力な基盤となるのが、完成度の高い、良質で持続可能な製品開発体制と、サプライチェーンの全プロセスに及ぶ厳格なマネジメントである。このほか、製品原料や製造プロセスにおいても環境保護のための配慮がなされており、製品に 100%再生アルミ素材を使用する独創的な取り組みを行うなど、回収されたアップル社の使用済み端末から取り出した素材をリサイクルし、新たなアップル製品に使用している。

3.2.2 使用済み端末の回収がもたらす持続可能なマーケティング手法、顧客とのより良いパートナーシップ

使用済み端末の回収は、新製品の販売促進に役立つほか、利用者を将来にわたって囲い込む手段にもなり、消費者が多くの選択肢から特定メーカーの新製品を選び、買い続ける動機づけとなる。

その一方、端末買い換えを支援する仕組みは、国が推進するエコ、環境保護、持続可能な発展などの理念にも合致しており、公益事業に対する消費者の注目を喚起し、エコ、環境保護を重視する消費者をより多く引き付け、環境汚染を減らす行動へ参画させる意義も併せ持つ。

3.2.3 使用済み端末の回収により、スマホ業界におけるトップランナーの地位を維持

多くのスマホメーカーが成長や売上高に注目する中、解決が急務となっている回収の難題は無視されがちである。アップル社のほかにも一部の中国メーカーも同様の仕組みを持っているが、より多くの中国系スマホメーカーがこの問題に注目する必要がある。

現在、多くの中国系スマホメーカーが回収の重要性に注目しているものの、情報開示や回収した部品の価値の最大化、サプライチェーンの管理、プライバシー問題への対応など、改善の余地はまだ大きい。将来的には、こうした問題を重視するメーカーほど、よりハイエンドのブランドを志向するとみられ、差別化を通して優位性を形成し、業界をリードする可能性も考えられる。

4. 企業で高まる社会的視点への注目 使用済み端末の回収は一つの発端に

4.1 海外進出の本質は、現地における新たな価値の創造にあり

海外進出を選ぶ中国のスマホメーカーにとって、海外市場の開拓に当たり、持続可能な発展戦略を持つことが他より重要になる。

OPPO、vivo などの中国系スマホメーカーは、海外市場においても大量の広告投入など、従来型のマーケティング手法を取っている。2017 年に OPPO、vivo がインド市場で投じた費用は、約 23.6 億元相当に上る。

短期間のうちに大量の広告を投入するマーケティング手法は、ブランドの知名度を高める上では一定の効果が期待されるものの、長期的には「スマホマーケティングの軍拡競争」に陥る恐れがあり、企業のコスト増と利益の圧迫につながりかねない。将来を考えた場合、持続可能なモデルとは言えない。

「中国での成功経験はもちろん学ぶべきところがあるが、その手法は決して海外にそのまま持ち込むべきではなく、現地の国情やマーケットへの認識を高め、消費者のニーズに立ち返って突破口を探る必要がある —— vivo CEO 沈煒」

スマホメーカーの視点から考えると、現地の消費者と真の関係を構築し、消費者に認知されるようになれば、持続可能な発展への取り組みの効果を、ある程度は高めることができるだろう。

とりわけ海外市場では、現地の法律や社会状況がそれぞれ異なる。社会の持続可能な発展、現地ユーザーへの理解と共感といった視点を掲げて海外市場に入り込み、ソーシャル・ライセンス(Social License)を勝ち得た企業こそが、将来的に最も強い競争力を持つことになる。

4.2 社会的視点こそスマホメーカーの「ぬくもり」の源泉

4.2.1 スマホを使いこなせない高齢者

若年層と比べ、高齢者は心理的にも、視力、記憶力などの面でも若者とは状況が異なる。スマホの普及により社会や若年層の利便性は高まったものの、高齢者にとってスマホは扱いにくく、却って不便さが増大する結果となり、スマートライフを享受できない状況である。

さらに、多くの高齢者が若者による過度なスマホ利用に不満を持っており、子供との心理的なつながりを構築することが難しくなっている。こうした問題は、農村部でより目立っている。

4.2.2 青少年のスマホ依存症問題

成長期の青少年がスマホの利便性と娯楽性に取りつかれ、ゲームや SNS 上の交流に没頭する例がみられる。電子製品の画面を長期にわたり使用しすぎると、青少年の生理的な発育や認知能力が損なわれる恐れがある。

世界保健機関(WHO)による直近の「国際疾病分類」の改訂では、「ゲーム障害」が精神や行動に関する疾病として初めて国際疾病に正式認定された。

「ゲーム障害」の患者には、正常な日常生活や仕事、人との付き合いに支障を来たすといった症状がみられる。青少年がテクノロジーの利便性や娯楽性を享受しながら同様の問題を回避できるようにするため、現在各国の政府、通信キャリア、スマホメーカーなどにおいて方策を検討する必要がある。

4.2.3 避けて通ることのできないプライバシー保護

「GPS 機能の利用、無料 Wi-Fi 接続」に代表されるスマホの利便性や遍在性は、同時に個人情報漏洩のリスクも増大させる。こうしたリスクは、ユーザー個人のプライバシーの安全にかかわるばかりでなく、財産の安全性の面でもユーザーに損失を与えかねない問題である。

テンセント社会研究センターと DCCI インターネットデータセンターが共同で発表した「インターネット上のプライバシーの安全およびインターネット詐欺行為に関する研究分析報告」は、

「中国で移動通信端末向けのインターネット事業が急発展する中で、プライバシー情報の漏洩、インターネット詐欺の横行が問題となっているが、利用者の防御意識は弱く、インターネット上の情報保護の戦いにおいて、常に劣勢に立たされている」と述べている。スマホメーカーや関係事業者は、製品の基盤となる原理や業界規範という角度から、プライバシー情報セキュリティの問題の解決を図る必要がある。

5. 5G 時代の「ぬくもり」による局面打開

2019 年 6 月 6 日、工業情報化部は第五世代移動通信(5G)の営業許可証を正式に交付した。これにより、中国は正式に 5G 商用化元年を迎えた。中国の各大手スマホメーカーは、それぞれ自社の保有する 5G テクノロジーとその活用について、PR 合戦に乗り出している。

テクノロジーの大規模な発展は社会、企業のいずれにもチャンスをもたらす。

「スマホが 5G 時代に入ることは、全世界のメーカーにとっては新大陸発見のようなもので、先んじてこの大陸に足を踏み入れた者、あるいはこの広大な大地で十分な土地を囲い込むことができきた者が、新たな発展のチャンスをつかむだろう。誰もがこの競争に後れを取るまいと、歴史に置き去りにされたノキアやモトローラの轍を踏むまいとしている。 ——Wechat『翟菜花』公式アカウント」

すべてがインターネットにつながる 5G 社会は、未来に無限の可能性をもたらす。新たな技術の普及に伴い、今存在する多くの社会問題が、斬新な手法で解決できるようになるだろう。現在、ビジネスや新技術をテーマとするさまざまなインターネットコミュニティでは、長期的な視野を持つ企業や専門家が「社会と更に密接につながりながら、5G 時代における飛躍の場を得るために、企業はいかに動くべきか?」をテーマに、対話を通した「答え」探しを始めている。

こうした動向からは、業界と最も関連の深い社会問題の解決からスタートし、5G や AI といった新技術の特長を生かし、社会とビジネスに立脚しながら価値と競争力の向上を図る――という方向性が読み取れる。

5.1 5G テクノロジーとスマホなどスマート端末との連携は、教育リソースの分配改善に寄与する

4G 時代である現在、スマホはその携帯性や他の情報機器との連携性が注目され、早くから多様な教学シーンへの応用が進められてきた。

ユネスコ(UNESCO、国連教育科学文化機関)には、ICT(Information and Communication Technology)の導入に関する専門部署が置かれ、情報伝達ツールを活用した教育モデルのサポート、強化、最適化をめぐる検討を進めている。

現在、すでに多くのパイオニアが「インターネット+教育」における 5G 通信とスマホの運用シーンの検討に着手し、教育業界の持続可能な発展や、教育リソース偏在の緩和を目指している。

中国四川省の成都天府第七中学では、クラウド技術を使った遠隔授業を支援先の凉山州昭覚県万達愛心学校に提供し、現地の教員や生徒に新鮮な体験をもたらしている。以前、このような動画授業は主にインターネットと大型スクリーンを用い、オンラインでのリアルタイム配信または録画配信の形で行われていた。

一方、現在は 4K/8K 全天球カメラ(360° カメラ)を使って天府第七中学の授業風景を撮影。5G 回線で VRMOOC クラウドにアップロードし、スマホや教室のスクリーン、VR ヘッドセットなどの端末に遠隔配信することで、僻地の農村に都市のカリキュラムを届ける。この取り組みにより、成都天府第七中学には「中国モバイル 5G クラウド教育基地キャンパス」の称号が贈られた。

5.2 テクノロジーや工業デザインを活用する教育事業者の、「ハイエンド化」に対する認識

5G テクノロジーの誕生により、人々はますます科学技術分野の教育を重視するようになり、STEM 教育カリキュラムなどの普及が促されている。一方、テクノロジーとカルチャーの高度化は、最終的に将来の消費者やハイエンドマーケットを育て、ハイエンドブランドの認知度を高める手段となりうる。*STEM:とは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の 4 教科の教育を指し、分野を超えたコミュニケーションやフレーム構築、柔軟な運用などの知識や能力の育成に重きを置いている。

2018 年、快手(中国の有名な短編動画投稿コミュニティで、日常生活シーンの記録や共有に利用される。)のプログラマー育成プログラム「未来編程(未来のプログラミング)」が、中国湖南省西部の 3 つの県級中等学校で正式にスタートした。立ち遅れた農村部の県・鎮(いずれも行政区画)レベルの中学生・高校生や教員が育成の対象。教育での IT 活用能力において顕著な大都市と農村部の格差を縮小する狙いがあり、農村部の若者に情報リテラシーや知識を身につけさせ、インターネット上の情報に対する識別能力を養い、プログラミング能力を習得させることにより、将来の職業選択の幅を広げる。

農村部の子供たちも都市部の子供と同じように、インターネット上の情報を識別する方法を理解し、基礎的なプログラミング言語を学ぶとともに、個々の関心や趣味に応じてミニプログラムのアプリやゲームを自ら作成する。

5.3 スマホが貧困扶助に関する情報共有の窓口に より精度の高い支援へ

スマホは僻地で行われる多くの調査研究や情報収集の困難を改善するツールにもなる。アプリ開発や技術サポートと組み合わせることで、情報入力・共有の窓口としてスマホを活用することができ、貧困状態にある人々や村のインフラ等に関する情報の収集や伝達に役立てられる。

貴州省の民生データの収集・整理・分析・応用に特化して独創的なサービスを提供するハイテク企業「人和数拠(人とサービス)」は、従来からの問題である農村部のデジタルデバイド(情報の非対称性)の解消を実現した。

同社は、個人や家庭の基本データ、教育データ、人材育成情報、技能情報、就職履歴などのデータを収集し、ビッグデータの活用により労働力と職業能力の総合評価を行っている。また、AI の活用により、労働力の就業・起業のニーズに関する分析を行っている。

5G テクノロジーの発展より、より高い接続性能や通信速度が実現すれば、同社は貧困人口の基本情報をより効果的に収集し、精度の高い計算を行うことができると見込まれる。これは、農村労働者の間で通弊となっている無計画な就職行動や就職難の問題をより適切に解決し、農村における貧困扶助をさらに進めることにもつながるだろう。

5.4 5G テクノロジーによるデータ演算と情報共有の加速が促す「交通の進化」

5G テクノロジーとともに生まれた「IoV(車のインターネット=コネクテッドカー技術)」は、今後、人々の外出手段を大きく変えるとみられる。IoV では、車両の位置、速度、進行方向がすべてデータとして記録され、周辺環境、施設、通行者の情報と統合される。接続性能の高さを特性とする IoV を用いれば、十字路の通行や通行者の飛び出しに関する注意喚起も可能になる。

十字路は、通行者や自転車、電動バイク・カートといった軽車両との衝突事故が発生しやすい場所である。さまざまな理由で、ドライバーは通行者の急な横断を察知しにくい状況にしばしば遭遇する。

5G を活用すれば、交差点に設置されたカメラやレーダーを通し、AI による分析が可能になる。通行者と車両との衝突リスクが検出された場合は、道路脇に設置された機器や通行者のスマホ、車両に搭載された内部センサーが直ちに通知を送り、通行者とドライバーに安全注意と事故回避の行動を促す。

当社がこれまで支援したプロジェクトにおいても、自動車業界やその関連業界は、CSR 活動の一環として常に道路上の交通安全対策に力を入れてきた。

トタル社(フランス資本)は、2010 年から「道路安全訓練キャンプ」をスタートした。これまで、すでに 110 回近くのイベントを開催し、全国 17 の都市で、子供向けに道路交通や生活上の安全知識を伝えている。5G や IoV の応用が本格化すれば、道路交通の効率化や無人運転の導入により、道路上の交通事故の発生は大幅に減少すると期待される。

トタル社にとっては、現在の子供向けの安全啓発活動のような CSR 活動から、今後は道路交通の効率化に関する取り組みや、未来の交通を体験する活動にシフトしていくことも一考に値するだろう。

5.5 スマホから入手するより精度の高い災害情報、事前警報

変動の波が激しさを増す世界の気象をモニタリングし、今後起こりうる災害について警報を行う上でも、5G テクノロジーを役立てることができる。

5G を利用すれば、リアルタイムでのデータ収集やモニタリングが可能になり、気象専門家はこれらのデータを基に水蒸気や雲の分布といった広域の気象要素をより手早く正確に観測することができるほか、これらデータを分析することで、気象状況の予測速度や精度を大幅に高めることができる。

また、地滑りリスクの高い山の斜面などにセンサーを設置すれば、地滑りの予兆をリアルタイムでモニタリングすることができる。センサーが異常を検知すれば、直ちに起動してデータを送信する仕組み。スマホを通して災害情報を直接リスクの高い地域の住民に送信し、避難を呼びかけることも可能だ。

DoCoMo 社が 5G 技術の応用により開発した IoV システムは、通行者、目的地の天気、現在の災害情報、現在地付近のイベントなどの情報を収集してドライバーに伝えることができる。こうした情報をリアルタイムに把握し、安全運転に与える影響を計算できるほか、車両間通信、車両と道路との通信など多様な情報を駆使した先進的な運転サポートを可能にし、より安全な外出システムを実現する。

道幅が狭まるランウェイで先を争うように、イノベーション活動の難度は今後ますます高まるだろう。持続可能な発展を目指す社会的視点を持つことが、従来ビジネスにおいて自社の競争力を高めるための大きな戦略方針となる。

6.「ぬくもり」を出発点に 「ハイエンド化」、「裾野拡大」、「海外進出」の課題を一挙解決

5G テクノロジーの影響力は計り知れない大きさであり、私たちも、新技術が多様な分野で活用され、多様な業界に活力を与え、イノベーションをもたらす大きな風穴となっていることを目の当たりにした。ただ、現時点では新技術によって実現できるのは「つながり」にとどまっており、「ぬくもり」をもたらすまでには至っていない。

「つながり」から「ぬくもり」を生み出すために必要となるのは、技術や人工知能による高速で良質なアクセスのほか、人間性や社会的情緒、心の温かさといった面での充足をもたらすことである。つまり「善を志向するテクノロジー」を加熱させることが求められる。

スマホメーカーに話を戻すと、4G 時代の時点で、スマホはすでに単なる通信の基本機能の枠を超えて、現代生活に欠かせない基本ツールになっていた。

5G 時代の到来により、スマホは新技術の最大の窓口となり、すべてがインターネットにつながる IoE 時代への重要なステップとなる。私たちが目にしている通り、5G テクノロジーの助けにより、スマホメーカーは今やより多くの社会問題の解決を助ける能力を具えるに至った。これらはすべて、スマホが「つながる」という段階を超えて「ぬくもり」を生み出そうとしていることの証左であり、スマホの社会性に目を向けてこそ、5G 時代に真の戦略的意義が具わるのである。


MSC は中国における SDGs 導入コンサルティング会社の先駆けとして、顧客企業に寄り添いながら、ビジネスの発展と社会問題との境界線を探るためヒントとサポートを提供し、「社会問題の中からビジネスチャンスが生まれ、ビジネスのロジックの中から社会的な影響力が生まれる」ことを掲げています。「SDGs」を単なるラベルやコンセプトに終わらせず、SDGs の方法論を戦略と成長、マネジメントと運営、ブランドとマーケティング、製品とイノベーション、社会的責任と公益、といった場面にも応用することで、企業経営のプロセスをめぐるさまざまな課題を解決し、ビジネスにつながる価値を創造し、社会的な影響力を構築します。

ビジネス分析に社会調査の手法を織り込んだ MSC 独自のツールやメソッドに加え、企業や市場に対する深い洞察を通して、企業の特性に合わせて SDGs をそのビジネス戦略に落とし込むことで、企業が確実に競争での優位性を獲得し、定着させ続けられるようサポートします。

これまで 5 年にわたる試行錯誤を重ねる中で、MSC はアンハイザー・ブッシュ・インベブ、ロレアル、ヤム・ブランズといった外資系企業や、国家電網、華潤集団、北控集団などの中国国営企業、テンセント、アリババ、快手(KWAI)などの民営企業を含め、トップクラスの企業 300 社余りに業務を提供してきました。単独のプロジェクトで億単位の影響力を生み出した事例があるほか、難度の高い国際コンサルティングも多く手掛けています。

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中国商業新聞