ゼネレーションZ、裾野市场、社会意識の覚醒……多様な動向の中で存続可能なブランドとは?

1. 社会意識の覚醒の波はもう来ている

社会意識の覚醒が続く今、恐らく誰もが感じていること:私たちの社会は透明化、非中心化しつつある。

テクノロジーが発展し、ソーシャルメディアや自己発信型のプラットフォームが誕生したことにより、人々が企業の行為を把握し、チェックするための手段が増え、自身の見聞を発信するためのアプローチも多元化した。また、信頼性のある情報の発信者は、もはや公式のチャネルやキー・オピニオン・リーダー(KOL)に限定されず、誰もが情報発信の媒体としての役割を担えるようになった。

こうした動きを受け、企業の行動や動向は次の理由から慎重さを増している。

  • 誰もが社会的価値のチェッカーとなった。
  • 企業は消費者、従業員、ステークホルダーから三重のチェックを受けるようになった。
  • 短編動画などを発信するチャネルやプラットフォームの登場で、情報の信憑性が大きく高まった。
  • 企業の「広報」の難度が大幅に高まった。

以上の理由から、社会問題への関心の持ち方や読み解き方は、企業が発展プロセスにおいて向きあうべき課題として、その重要さを増している。こうした課題に向き合う上で、企業は次のようなトレンドを把握しておくべきである。

1.1 社会問題とかかわりのある問題は、事態が急速に展開しやすい。

企業の製品やサービスに問題が起き、かつその問題が身体の安全、食品の安全、プライバシーの安全など人々の暮らしと密接につながる社会問題に関係する場合は、人々の関心の的になりやすい。

サムソンのスマートフォン「Galaxy Note7」は、製品発表から 1 か月余りの間に電池の欠陥による爆発や発火事故が相次ぎ、発生件数は世界合計 30 件余りに達した。その後、サムソンは「爆発」について無責任な言論(または責任逃れの発言)を繰り返したほか、中国市場における製品のリコールを拒否したり、中国エリアの責任者に土下座をさせたりするなどの行為により、消費者の強い怒りを買った。同社のシェアは最高時の 20%から 0.8%未満にまで急落した。

1.2 政治的な正しさを求めるカルチャーが鮮明に

さまざまな社会的テーマが人々の注目を集める現在、従業員、消費者や各ステークホルダーは、企業が社会的テーマに十分な関心を持っているか、社会的テーマや社会の特殊なグループにどのように扱っているかことのほか重視している。「政治的に正しくない」傾向を見せた企業は、しばしば社会からの疑念、さらには非難の的になる。

以前、アップル社製スマートフォンの絵文字セットのうち人物のマークは、すべて白人の容貌を基にしたもので、他の人種の姿はなかったため、同社は利用者から人種差別的傾向があると非難されていた。こうした消費者の疑念を晴らすため、同社は新たにリリースした基本ソフト iOS 8.3 で絵文字セットを更新。アフリカ系黒人、アメリカ系黒人、東南アジア系の濃い肌色の人物、白人、黄色人種、金色の人物など 300 もの新たな絵文字が追加された。さらに、LGBT(性的少数者)への配慮として、さまざまな性別構成の家族のマークが計 15 種用意された。

1.3 1つの事象が企業の価値観、マネジメント、戦略にまで波及

企業に対する人々の批判の矛先は、個別の事象に留まることなく、企業の「価値観」や「戦略」にまで及び、その価値観の正しさや、戦略に問題がないかどうかまでが疑いをもたれることになる。

かつて相次いでスキャンダルに見舞われた百度(バイドゥ)は、その後も信用失墜のイメージを払拭するのに苦労している。百度の CEO である李彦宏氏が中国工程院(工学アカデミー)の候補者に選ばれた際にも、人々からは反対の声が相次いだ。百度に対する非難は同社が引き起こした個々の問題にとどまらず、人々の疑念は同社の価値観や戦略にも及んでいる。現在、情報サイト「搜狗微信」で「百度の価値観」を検索すると、2,000 本を超える記事がヒットする。一方、「アリババの価値観」、「テンセントの価値観」は 900 本余りに留まる。

1.4 トップダウン型の資本市場とボトムアップ型の消費市場

CFA Institute の研究によれば、現在、投資家の間では ESG 投資(環境、社会、ガバナンスへの取り組みを重視した投資)がますます重んじられるようになっている。また、ESG はビジネス上の価値と矛盾するものでなく、逆に企業の投資をより完全で長期的なものにするという意識が高まりつつある。

2017 年、ING 銀行は医療機器メーカーであるフィリップス(Philips)社への融資に当たり、同社向けの貸出金利を環境保護関連の業績と連動させることとした。同社が借入期間中に環境保護の取り組みを増やせば(環境リスク管理、新エネルギーの利用、グリーン購入など)借入コストが低減する仕組みである。

2. 社会意識が覚醒する中、企業はいかにして社会的ライセンスを得るのか?

企業のブランディングにフォーカスして以上の社会的風潮を考えた場合、私たちの考えるべき方向性は次のようなものとなるだろう。

  • ブランドの「社会問題」:企業は、自身のブランドとその背後にある代表的な製品や業務などが、どのような社会問題を起こしているか、これらをいかに解決すべきかを意識しなければならない。
  • ブランドの「社会的価値」:企業は、自身のブランドとその背後にある製品や業務などが、どのような社会的価値を生み出せるのか、いかにしてそれを掘り起こすのかを思考しなければならない。

これらに加え、企業がもう一つ解決すべきことは、「由来」の問題である。企業の社会的価値は、自身のブランド価値や、ブランドの背後にあるビジネスのロジックに根差しているべきであり、外側だけを取り繕ったものであってはならない。社会の透明化、非中心化のプロセスが進む中で、うわべだけの「装飾」は却って逆効果となりうる。

配車アプリを運営する滴滴(DIDI)は、300 日にわたる「All in 安全」キャンペーンを終了した後も、引き続き「全力を尽くして安全に注力する」ことをキーワードに掲げている。それでもなお、人々にとって、滴滴「安全」を意味するものとなっていない。

企業が持続性のあるブランドを打ち立てていくプロセスは、企業がある種の「社会的ライセンス」(Social License)を獲得してくプロセスに似ている。この「社会的ライセンス」とは、何らかの実体のあるライセンスを意味するものではなく、企業のブランドの真の姿に対する人々の信頼感、尊敬、心理的なシンパシーから生まれるものである。

企業が何らかの社会問題の解決、あるいは自身の社会的価値の提示によって、一定の社会的な影響力を生み出した時、人々はそのブランドを買いたいと思うだけでなく、そのブランドを支持し、自発的に広めて応援しようと考える。これも「社会的ライセンス」である。

3. ブランドの社会的な一面:評判

1つのブランドが「社会的ライセンス」を得ているかどうかは、最終的に、ブランドの評判として現れてくる。このため、自身のブランドの社会における「評判」がどうであるか、人々のブランドに対する認識や期待は何であるかを知ることが、企業が存続可能なブランディングの方向性を定める重要な一歩となる。

当社はかつて、ある 500 強企業からの依頼案件を手掛けた際、その一環として同社の「評判」に関する調査研究を行い、2 つの非常に核心新的な問題について検討したことがある。

  • 消費者、従業員、ステークホルダーは、その会社がどのような企業であるかを分かっているか?
  • その会社への理解度が相対的に高く、シンパシーを感じている消費者、従業員、ステークホルダーは、他とどのような違いがあるのか?

半年近くに及ぶ調査研究の中で、当社はその企業の内外にアンケートを行い、合計 7,000 件近くの有効回答を得た。調査対象者の選定に当たっては、13 の省級行政区をカバーし、本社および加工工場の管理職から末端職員までの各ステークホルダーが含まれるようにした。

収集した大量のデータを分析した結果、私たちは次のような興味深い結論に至った。

  • 相関性:企業への理解度が高いほど、シンパシーを生じやすい。従業員のうち 87%以上が会社の理念に賛同している。このことは従業員にもポジティブに働き、仕事をより意義深いものにしている。
  • 相関度:企業への理解度が高いほど、イメージアップの度合いや動機付け効果が高くなる。企業の従業員、消費者、ステークホルダーがその企業のことを知っているほど、シンパシーや好感を持ちやすく、かつシンパシーや好感度が高まるスピードも加速する。すなわち、イメージアップの度合いや動機付け効果がますます高くなる。
  • 相関力:企業への理解度が高いほど、自発的行為によって他者を巻き込もうとする行動を促しやすい。企業への理解度が高いほど、従業員、消費者やステークホルダーは、積極的な自己実現、企業の関連活動への参加、ポジティブな情報の伝達、周囲の人に企業を印象づけるための自発的な働きかけ、などの行動を取りやすい。

このほか、私たちは同社の既存 CSR 事業についても調査研究を行い、多元的な評価指標を模索しつつ、どのような社会的テーマが会社のブランドに大きな影響を与え、最大の動機付け効果や相関力をもたらすかなどを探った。

全ての調査研究を終えて、企業のブランディングのプロセスにおいては次のようなアプローチが極めて重要な役割を果たすことが判明した。

3.1 消費者が最も信頼する情報チャネルの模索

どの企業も、広告や SNS、口コミなど複数の情報発信チャネルを用意している。このため、プロジェクトの内容に合わせて使用するチャネルの優先順位をつけ、従業員や消費者、ステークホルダーが最も信頼する、最もシンパシーを生じやすい、最も高い動機付け効果を期待できる情報チャネルを探ることが、情報発信の重点となる。

3.2 最も動機付け効果の高い社会的テーマの選定

企業は、社会的テーマの動機付け効果を知るために、まずはそのテーマがどの部門と関係するのか、どのような形で参画すれば従業員に対する動機付け効果を最大化できるかを検討すべきである。先述の通り、最も信頼できるチャネルこそ、最大の動機付け効果を生むことができる。

3.3 従業員や消費者の行動力の強化

企業が最適な社会的テーマを検討する上で、動機付け効果に加えて、いかにして関係者の行動力を高めるかを考慮する必要がある。つまり、企業活動に参加したり、積極的に自己実現を図ったり、さらには自発的な行動で他者をその企業の PR や応援に巻き込んだり、といった行動を取る従業員、消費者、ステークホルダーをいかに最大化するか、である。

このプロセスにおいては、会社や工場の所在地によって直面する社会的状況が異なっていることにも周囲を払う必要がある。例えば、ある地域では高齢者福祉の問題にフォーカスし、別の地域では環境問題に重点を置く、などである。適切なテーマを選んで実行に移してこそ、関係者の行動量を最大限に高めることができる。

3.4 最適な「消費者への投資の道」の模索

以上のいくつかのステップを通して、私たちは最適な「消費者への投資手法」を導きだした。つまり、コストをなるべく少なく抑えつつ、最も有効なアプローチを探り出し、最も適切なセクターを選ぶことにより、最大の社会的ライセンスの獲得を目指す手法である。

4. SDGs 戦略から存続可能なブランドづくりを「俯瞰」

さまざまな案件に次々と関わる中で、私たちが常に考えていたのは、いかにして存続可能性を「SDGs(国連の掲げる持続可能な開発目標)」というより大きな枠組みで捉えるかである。この枠組みは、必ずしもブランド力や評判に関係するとは限らないが、企業戦略という見地から SDGs の在り方をジャッジする上で有効である。

ここでは、あるシンプルなモデルを使って説明したい。横軸は「ビジネスの成長と発展」、縦軸は「社会的価値と影響」を示している。ビジネスの成長と発展は、「どの業界に属するか」、「シェアまたは時価総額」を物差しにすることができる。社会的価値と影響については、「どのような社会的価値があるか」、「この社会的価値にはどんな影響力があるか」から知ることができる。

SDGs 戦略は、図の左下から右上方向への持続的な成長を目指している。つまり、社会的価値および影響力、ビジネスの成長および発展という 2 つの面において、持続的な成長を実現するための戦略である。すなわち、以下の内容である。

  • 社会問題の中からビジネスチャンスを発見する
  • ビジネスの論理の中で社会的影響力を生み出す

これと逆に、SDGs 戦略の見地から存続可能なブランディングについて考える場合も、同様に次のモデルを通して理解することができる。

ブランディングのモデルでは、横軸を「ブランド力」の強弱に置き換える。具体的には、「位置づけ」、「認知度」、「名声」などを物差しとする。縦軸にはそのまま「社会的価値と影響力」を用いる。このような物差しを用いれば、存続可能なブランドが、「人に尊敬され、心理的なシンパシーを生み出すことのできる」、かつ「明確な社会的価値とビジネス上の価値を有する」ブランドであると理解できる。

5. 社会的視点と SDGs の視点を組み合わせ、企業の「存続可能なブランド」を改めて理解

さらに、「社会的ライセンス」のピラミッドモデルと、先述の存続可能なブランディングのモデルを組み合わせることで、企業のブランティングを改めて理解しなおすことができる。

5.1 ブランドの「社会問題」

ブランドの社会問題について、ブランディングにあたり、まずは何が業界の課題であるかを明確に意識しておく必要がある。例えば食品販売業において、食品の安全の問題は、フードデリバリーサービスを手掛ける「餓了麼」や「美団」といった特定の企業に限らず、業界全体が直面する課題である。このため、企業としては、ビジネスにおける独自の競争力を活かしたソリューションを打ち出す必要がある。

次に、業界全体でコンプライアンスが進められている現状において、ブランド存続策の設定にあたり、いかにして業界の先頭に立つかを検討しておく必要がある。このほか、いかにして国や業界の政策・法規と矛盾しない形で企業独自の基準や制度をいかに整えていくか、新たな消費トレンドに対していかに多様な対応チャネルを維持していくか、といった課題も無視できない。

5.2 ブランドの「社会的価値」

内から外へ:企業のブランドと相関性の高い社会的テーマを選ぶ場合、関係するテーマに優先順位をつけ、会社の掲げるビジネスの論理に合致する、事業の成長に役立つテーマを優先的に取り上げていく必要がある。テーマ決定後は、さらに内容をブラッシュアップする必要がある。つまり、企業としてこのプロジェクトの中でどのような役割を担うべきか、企業としての社会的価値は何か、どのような形で体現するのか、事業にはどういった影響が生じうるか、などを明確に意識しなければならない。最後に、どのような手順で実施するかについて、定性的、定量的な分析評価を行う。

外から内へ:企業は外部の消費者をターゲットとして、人々の関心の高いテーマを洗い出し、その中から企業自身と密接なかかわりのあるものを選ぶ。こうした社会問題の中からビジネスチャンスを見出し、ビジネスチャンスからブランドの確立につなげ、最終的に、ブランドイメージの向上と事業の成長を実現する。

6. 存続可能なブランドと成長、運営、戦略とのつながり

ブランドの「社会問題」とブランドの「社会的価値」を組み合わせてブランディングを進める過程で、存続可能なブランドは決して他部門と無関係ではなく、企業の成長、運営、戦略のいずれの面でもプラスに働くということに気付く企業は少なくない。

ここからは、私たちが顧客のインターネット関連企業 2 社から請け負った「SDGs ブランディングの取り組みを通した企業そのもののブランド力の向上」、「SDGs への取り組みや製品を通した業務のブランド力の向上」という 2 つの事例を通して、一つの考え方を共有する。

6.1 SDGs ブランディングの取り組みを通した企業そのもののブランド力の向上

私たちが依頼を受けたのは中国の著名なインターネット企業である。同社の製品はどちらかと言えば大衆層向けのラインナップであり、インテリ層向けのブランドイメージの構築に苦労していた。

同社の製品は、「裾野の拡大」、「広く恩恵をもたらす」という2つの社会的価値を大きな強みとしており、こうした特徴を明確にしたことにより、農村部の振興に特化した戦略が生まれた。この戦略は、農村部の人、物産、文化リソースをつなげることを目指すもので、企業自身のビジネスの論理や社会的価値に合致しているばかりでなく、同社にとっては新たな業態である電子商取引(EC)の立ち上げにもつながった。

2018 年、中国の貧困県で EC を利用して物品販売を行う人の数は、約 115 万人に上り、年間売上高は 193 億元に達した。同社はある典型的な貧困県の村で、EC の普及を担うリーダーの養成や、起業スクールの創設などの活動により、村民の育成や支援を行った。こうして生まれた約 20 人のリーダーが、村内における EC 普及を牽引した結果、村の GDP は 1,000 万元を超え、500 戸余りの貧困戸の増収が実現した。

同社は、インターネット企業におけるコンテンツ審査制度の全面的是正や改善など、業界全体にかかわる課題においても業界の牽引役となっている。審査の厳格化を進め、システムによる機械的な審査を何重にも行った上で、さらに人の手による審査を追加。より見解が分かれやすい動画の問題については、専門の委員会を設けて審査をすることにより、コンテンツの質を確保している。また、アップロードに際して、青少年の過度な没頭を防ぐためにより厳格な規制を設け、短編動画業界における未成年保護の業界標準づくりを引き続き牽引している。

同社はさらに、社会的価値のある技術応用シーンの開発や育成を進めており、その中核技術を活用した災害救援プラットフォームの開発、コンテンツ検索機能を活用した無形文化遺産の記録、AI テクノロジーを活用した行方不明児童の手がかり収集などを手掛ける。

以上のトータルな戦略によって、同社は人々の心に優れたブランドイメージを蓄積するとともに、自社に対するインテリ層の認識を変え、SDGs ブランディングを通して企業自身のブランド力強化を実現した。最終的に、こうした効果は企業の事業成長にも反映された。

6.2 SDGs への取り組みや製品を通した業務のブランド力強化

以上はブランドの「ハイエンド化」を実現した事例だが、次に紹介する企業の事例は、「裾野の拡大」に成功した例である。

「精度の高い貧困扶助」、「農村の新興」といった国家戦略の方針を受け、インターネット大手である同社も、いかにして自社のインターネット製品に農村部での応用シーンを見出せるかを常に思考していた。
*「精度の高い貧困扶助」が重要思想として提示されたのは 2013 年 11 月が最初である。習近平・中国共産党総書記(国家主席)は湖南省湘西トゥチャ族ミャオ族自治州を視察した際、初めて「事実に即して正しい判断を行い、地域の特質を踏まえ、状況別に指導を行い、精度の高い貧困扶助を行うように」との重要な指示を出した。
*2017 年に開催された第 19 回中国共産党大会において、習近平・中国共産党総書記は初めて「農村振興」戦略を打ち出し、同戦略の理想として「産業が盛んで、生態と共存した暮らしやすい環境で、気風が文明的で、ガバナンスが有効で、生活が豊か」という姿を目指すことを明示した。

中国西南部の農村でフィールドワークを行った結果、現地では外部との間で感情や情報、富のつながり失われており、これが農村の衰退を招く最も根本的な原因になっていることが判明した。奇しくも、こうしたつながりの喪失を解決する上で、同社のコア・コンピタンスは有用であることから、私たちは同社のために一連のトータルな戦略を作成した。

この村では今や、文字を読むことができない村民でさえ、売店の無料 Wi-Fi サービスと動画チャットプラットフォームを利用して域外に暮らす子女と連絡を取り合うことができる。村の各種特産品の売れ行きは好調で、村の幹部たちもあちこち移動することなく、スマホのクリック 1 つで通達、アンケート、行事の参加者募集、行政に関する意見交換、文化活動の情報共有などを行えるようになった。

こうした成果により、ブランドの社会的影響力が高まると同時に、極めて大きなビジネス上の価値ももたらされた。同社製品の大衆層における浸透率が 8.5%拡大したのである。

以上の事例はいずれも、SDGs ブランディングへの理解を深める上で、次のような経験をもたらしてくれる。

  • SDGs とは、ロジックによる推論の結果であり、ブランディングのアイデアではない。

優れた事業や戦略は、頭をひねれば思いつくことのできる「アイデア」ではなく、ブランドの社会的価値を掘り起こし、ブランドの背後にある社会問題について思考し、ロジックにより推論した結果生まれるものであり、ビジネスの論理と社会的価値に合致するものである。

  • 情報発信は関心を集めることによって実現するものであり、金銭で買うものではない。

企業自身または製品の社会的価値を掘り起こし、何らかの社会問題を解決し、企業の社会的な影響力を生み出すことにより関心を集めた結果の情報発信は効果がより高く、社会的な承認にもつながりやすい。

  • 金銭は節約するものであり、寄付するものではない。

企業の社会的価値を掘り起こすという観点から考えると、企業がビジネス上の価値と社会問題の解決を同時に両立させようとすることは、決して矛盾には当たらない。このような手法は、従来型の公益活動と比べて企業の資金を「節約」できるばかりでなく、事業の成長にもつながる。さらに、こうした手法によりもたらされる価値と影響力は、まとまった額を公益プロジェクトに寄付することで得られるものよりはるかに大きい。

  • ブランドそのものの存続可能性の更なる強化

以上、紹介した 2 つの事例から、SDGs ブランディングはいずれの場合も企業の戦略に組み込むことが可能で、しかも事業の成長や運営の改善、戦略の高度化につながり、その企業自体の競争力を高め、長い存続期間をもたらすことが分かった。

最後に、1つの公式を提示して、本稿「いかにして存続可能なブランドを構築するか」のまとめとしたい。すなわち、存続可能なブランドには 2 つの基盤があり、1つは外部から来る「公衆の評判」、1つは内部から来る「雇用者としてのブランド」である。

このうち、「公衆の評判」は、企業の製品やサービスに対する消費者の印象だけでなく、その企業の業界全体におけるイメージや地位、さらには企業が消費者や同業者以外の社会の各方面に与える全体的なイメージを反映している。一方、「雇用者としてのブランド」は、従業員の企業に対する認識を反映している。両者が合わさって初めて、企業のトータルな全体像が見えてくる。

「事業」と「リスク」は、企業の「公衆の評判」と「雇用者としてのブランド」を左右する二大要素である。企業として、自身の製品や事業を常に改善すると同時に、ブランドがダメージを受けるリスク、とりわけモラル面や公衆イメージの面でのリスクをなるべく低く抑える必要がある。リスクが低いほど事業は成長し、ブランドの存続能力も強化される。また、公衆の評判が高いほど、雇用者としてのブランド力も高まり、両者が揃えば企業ブランドの存続能力も強化される。事業がブランド力に裏打ちされれば、ブランドの存続力成長指数もますます高まることになる。


MSC は中国における SDGs 導入コンサルティング会社の先駆けとして、顧客企業に寄り添いながら、ビジネスの発展と社会問題との境界線を探るためヒントとサポートを提供し、「社会問題の中からビジネスチャンスが生まれ、ビジネスのロジックの中から社会的な影響力が生まれる」ことを掲げています。「SDGs」を単なるラベルやコンセプトに終わらせず、SDGs の方法論を戦略と成長、マネジメントと運営、ブランドとマーケティング、製品とイノベーション、社会的責任と公益、といった場面にも応用することで、企業経営のプロセスをめぐるさまざまな課題を解決し、ビジネスにつながる価値を創造し、社会的な影響力を構築します。

ビジネス分析に社会調査の手法を織り込んだ MSC 独自のツールやメソッドに加え、企業や市場に対する深い洞察を通して、企業の特性に合わせて SDGs をそのビジネス戦略に落とし込むことで、企業が確実に競争での優位性を獲得し、定着させ続けられるようサポートします。

これまで 5 年にわたる試行錯誤を重ねる中で、MSC はアンハイザー・ブッシュ・インベブ、ロレアル、ヤム・ブランズといった外資系企業や、国家電網、華潤集団、北控集団などの中国国営企業、テンセント、アリババ、快手(KWAI)などの民営企業を含め、トップクラスの企業 300 社余りに業務を提供してきました。単独のプロジェクトで億単位の影響力を生み出した事例があるほか、難度の高い国際コンサルティングも多く手掛けています。

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